物流効率化法の中長期計画・定期報告——特定事業者になるのはどんな運送会社か

「特定事業者に指定されると、中長期計画や定期報告を出さなければならないらしい」。改正物流効率化法の説明会案内や荷主からの問い合わせで、そんな言葉を目にした運送会社の方は少なくないはずです。ただ、「そもそも自社は指定される規模なのか」「指定されたら具体的に何を、いつ出すのか」「全事業者の努力義務と、指定された会社の義務はどう違うのか」——この線引きは、条文を追うだけではなかなか掴めません。

先に、要点をまとめます。

問い答え
いつから始まったか荷主・物流事業者の努力義務は2025年4月1日特定事業者の指定・中長期計画・定期報告の義務は2026年4月1日に施行1
運送会社が指定される基準特定貨物自動車運送事業者等=年度末に事業用自動車を150台以上保有する事業者2
指定されたら何をするか中長期計画(毎年度が基本、変更がなければ5年に一度)と、定期報告(指定の翌年度以降 毎年度)の提出34
指定されない会社は無関係かいいえ。すべての貨物自動車運送事業者に努力義務があり、判断基準に沿った積載効率向上等が求められる5

以下、「そもそも何の法律か」から順に、自社が対象になるかどうかを判断できるよう整理します。数値・施行日は国土交通省の一次資料で確認し、出典を脚注に残しています。

物流効率化法とは何か——努力義務と、特定事業者の義務の二層構造

正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」で、いわゆる改正物流効率化法です。2024年に改正法が公布され、施行は段階的に進みました。国土交通省の解説によれば、2025年4月1日に荷主・物流事業者の努力義務が施行され、続く2026年4月1日に、一定規模以上の事業者を「特定事業者」として指定し、中長期計画の作成・提出と定期報告を義務づける仕組みが施行されています1

ここで押さえておきたいのは、この法律が二層構造になっている点です。

  • 第一層(努力義務): すべての荷主・物流事業者が対象。判断基準に沿って、積載効率の向上や荷待ち時間の短縮などに「努める」ことが求められます5
  • 第二層(特定事業者の義務): 一定規模以上の事業者だけが指定を受け、中長期計画・定期報告という具体的な提出義務を負います134

「特定事業者」という言葉が独り歩きしがちですが、指定を受けない中小の運送会社にとっても、努力義務は無関係ではありません。まずは自社がどちらの層にいるのかを、規模の基準に照らして確かめるところから始めます。

「特定事業者」に指定される規模の基準

国土交通省の「物流効率化法」理解促進ポータルサイトは、特定事業者の指定基準を事業者の区分ごとに示しています2。運送会社に直接関わるのは、下表の特定貨物自動車運送事業者等です。

区分指定基準何を数えるか
特定第一種荷主9万トン以上前年度に貨物自動車運送事業者等へ運送委託した貨物の合計重量2
特定第二種荷主9万トン以上前年度に受け取り・引き渡しをした貨物の合計重量2
特定連鎖化事業者9万トン以上前年度に連鎖対象者(フランチャイズ加盟者等)が運送委託した貨物の合計重量2
特定貨物自動車運送事業者等150台以上年度末時点で保有する事業用自動車の台数2
特定倉庫業者70万トン以上前年度に入庫した貨物の合計重量2

トラック運送会社にとっての分かれ目は、年度末に事業用自動車を150台以上保有しているかです2150台以上の会社は、特定貨物自動車運送事業者等として指定の対象になります。指定は、事業を所管する大臣(事業所管大臣)が行うとされています2

ただし、基準に達した時点で自動的に指定されるわけではありません。まだ指定を受けていない貨物自動車運送事業者等は、前年度末の輸送能力が基準以上になった場合、翌年度の5月末までに国土交通大臣へ輸送能力を届け出る必要があります。その届出内容を国が確認した後、特定貨物自動車運送事業者等として指定される流れです6

いくつか、実務で誤解しやすい点を補足します。

「150台」は事業用自動車の保有台数です。 荷主・連鎖化事業者の基準(9万トン)と倉庫業者の基準(70万トン)は「重量」で数えますが、運送会社の基準は「台数」で数えます。区分によって指標そのものが違うため、荷主等の9万トン、倉庫業者の70万トン、運送会社の150台を混同しないよう注意が必要です2

運送事業として受託した貨物の再委託は、第一種荷主の判定には含めません。 第一種荷主は、「自らの事業(貨物の運送の事業を除く。)」に関して運送を委託する者と定義されています。そのため、運送会社が顧客から受託した運送を別の運送事業者へ再委託しても、その再委託貨物は9万トン基準の対象にはなりません。一方、運送会社が運送事業とは別の自社事業に関して運送を委託する場合は、その事業について第一種荷主に該当し得ます7。荷主側の9万トン基準と、運送事業者としての150台基準は、立場と対象を分けて確認してください。

なお、指定基準の細目や、自社が該当するかどうかの最終的な判断は、政省令や国土交通省・地方運輸局の案内で確認するのが確実です。本記事は制度の全体像を示すもので、個別の該当性を確定するものではありません。

指定されたら何をするのか——中長期計画と定期報告

特定事業者に指定されると、大きく二つの提出義務が生じます。中長期計画の作成・提出と、定期報告です。

中長期計画の作成・提出

理解促進ポータルによれば、中長期計画は各特定事業者(特定貨物自動車運送事業者等を含む)が作成します。運送事業者の根拠は法第38条とされています3。計画には、判断基準の取組事項を踏まえて、次の3項目について「実施する措置」「具体的な措置の内容・目標等」「実施時期等」「参考事項」を記載するとされています3

  1. 運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加(=積載の効率化)
  2. 運転者の荷待ち時間の短縮
  3. 運転者の荷役等時間の短縮

提出の頻度は、毎年度提出することを基本としつつ、中長期的に実施する措置を記載することを踏まえ、計画内容に変更がない限りは5年に一度提出するとされています3

そして見落とせないのが罰則です。ポータルは、中長期計画の規定による提出をしなかったときには、50万円以下の罰金と明記しています3。「努力義務だから出さなくてもよい」というものではなく、指定を受けた特定事業者にとっては提出そのものが義務である点に注意が必要です。

定期報告

もう一つの義務が定期報告です。対象は特定事業者として指定を受けた事業者で、運送事業者の根拠は法第39条とされています4。報告の内容は、判断基準の遵守状況(チェックリスト形式)、関連事業者との連携状況等の取組に関する状況(自由記述)などで、荷待ち時間等の状況は荷主・連鎖化事業者・倉庫業者が対象とされています4。報告の頻度は、指定を受けた翌年度以降、毎年度です4

運送事業者としての指定だけではCLOの選任義務は生じない

改正法では、経営レベルで物流を統括する「物流統括管理者(CLO)」の選任も話題になりました。ただし、この選任義務の対象は、ポータルによれば特定荷主および特定連鎖化事業者に限られ、法第47条・第66条が根拠とされています8特定貨物自動車運送事業者として指定されることだけでは、CLOの選任義務は生じません8。一方、運送会社が荷主としても特定荷主に指定される場合は、その荷主としての立場でCLOの選任義務の対象になります。自社がどの立場で指定されるのかを分けて確認してください。

指定されない会社にも関わる「努力義務」

規模が150台に届かず特定事業者に指定されない会社でも、努力義務は残ります。ポータルの「貨物自動車運送事業者等の判断基準」は、すべての貨物自動車運送事業者を対象とする努力義務として、次のような取組を挙げています5

  • 複数の荷主の貨物の積合せ等により輸送網を集約する
  • 配送の共同化に取り組む
  • 求貨求車システム等を活用した復荷(帰り荷)の確保により実車率の向上を図る
  • 配車システムの導入等により、配車・運行計画の最適化を行う
  • 輸送量に応じた大型車両の導入等を行う

あわせて、積載効率の状況や取組効果の把握、荷待ち・荷役等時間の短縮への協力・情報提供、標準仕様パレットの活用や共同輸配送の提案、物流データの標準化への取組、過積載など関係法令の遵守、トラック予約受付システムの利用なども、実効性確保に関する事項として整理されています5

これらはいずれも「努める」ことを求める努力義務ですが、内容を見ると、日々の配車・運行そのものの見直しに直結するものばかりです。配車・運行計画の最適化を検討する際は、Excel配車表の限界はどこかも参考にしてください。また、判断基準に登場する「荷待ち時間の短縮」は、別に記録義務も定められています。詳しくは荷待ち時間の記録義務で整理しています。運転者の労働時間そのものの枠組みは改善基準告示とはを参照してください。

実務チェックリスト

自社の対応状況を確認するためのチェックリストです。

  • 自社の年度末の事業用自動車保有台数を把握し、150台以上かどうかを確認したか2
  • まだ指定を受けておらず、前年度末の輸送能力が150台以上になった場合、翌年度5月末までに輸送能力を届け出る手順と担当者を確認したか6
  • 150台以上の場合、特定貨物自動車運送事業者等として指定の対象になり得ることを理解し、中長期計画・定期報告の担当者を決めたか234
  • 運送事業とは別の自社事業に関して他社へ運送を委託している場合、その貨物を荷主側の指定基準(前年度9万トン以上)に照らして確認したか(運送事業として受託した貨物の再委託は含めない)27
  • 中長期計画の**3項目(積載効率・荷待ち時間短縮・荷役等時間短縮)**について、記載できる材料が社内にあるかを点検したか3
  • 中長期計画の提出をしないと50万円以下の罰金があることを、担当者間で共有したか3
  • 定期報告の判断基準チェックリストに沿って、遵守状況を確認できる記録があるかを点検したか4
  • 指定されない規模でも、すべての事業者に努力義務があることを理解し、積載効率・帰り荷確保・配車最適化などの取組を検討したか5
  • 運送事業者としての指定だけではCLO(物流統括管理者)の選任義務は生じない一方、特定荷主として指定される場合は対象になることを確認したか8
  • 指定基準の細目・様式・提出先は、政省令や国土交通省・地方運輸局の最新案内で確認する運用にしているか

まとめ——「対象かどうか」の次に来るのは、報告の素材があるか

物流効率化法の特定事業者の指定は、運送会社にとっては年度末に事業用自動車を150台以上保有しているかが最初の分かれ目です2。指定を受ければ、積載の効率化・荷待ち時間の短縮・荷役等時間の短縮という3項目について中長期計画を作り、遵守状況を毎年度報告することになります34。指定されない会社も、努力義務として同じ方向の取組を求められます5。制度としては二層に分かれていても、求められている中身——積載率を上げ、荷待ち・荷役の時間を縮める——は、規模を問わず共通しています。

そして計画も報告も、いざ作ろうとすると、必要な数字が日々の業務のあちこちに散らばっていることに気づきます。一回の運送でどれだけ積んだのか、どこでどれだけ待たされたのか、どの経路をどう運んだのか。これらを報告の時期にまとめて集め直すのは、件数が増えるほど現実的ではなくなります。求められているのは、特別な集計作業ではなく、日々の運送実績がそのまま記録として残っている状態です。

運送番頭は、日々の受注・配車・委託・運行の実績を、二重入力なしで業務記録として蓄積します。案件が会社をまたいでも同じ内容を入力し直す必要はなく、実績はそのつど記録に残ります。中長期計画や定期報告のために別の台帳を新しく起こすのではなく、普段の配車業務そのものが、報告を組み立てるときの素材になっている——それが、規模の基準に関わらず、義務を最小工数でこなすための現実的な備えです。なお、運送番頭は業務記録を蓄積する立場であり、中長期計画・定期報告そのものを自動で作成・提出したり、法令対応の完了を保証したりするものではありません。計画・報告の内容と提出は、制度に照らして運用側で確認する必要があります。

脚注

  1. 国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」(段階施行:2025年4月1日 努力義務、2026年4月1日 特定事業者の指定・中長期計画・定期報告) https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000034.html 2 3

  2. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「特定事業者の指定」(指定基準:特定荷主・特定連鎖化事業者9万トン以上、特定貨物自動車運送事業者等150台以上、特定倉庫業者70万トン以上。指定の主体は事業所管大臣) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/designation/ 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

  3. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「中長期的な計画の作成」(記載3項目、毎年度基本・変更なければ5年に一度、未提出は50万円以下の罰金、法第38条) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/planning/ 2 3 4 5 6 7 8 9 10

  4. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「定期報告」(判断基準の遵守状況チェックリスト等、指定翌年度以降毎年度、法第39条) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/regular-report/ 2 3 4 5 6 7 8

  5. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「貨物自動車運送事業者等の判断基準等」(全事業者の努力義務:積載効率の向上等) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/lorry/judgment-criteria/ 2 3 4 5 6

  6. 国土交通省「特定貨物自動車運送事業者等に関するQ&A」(法第37条にもとづく輸送能力の届出、指定に係る届出期限は毎年5月末) https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001993651.pdf 2

  7. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「よくあるご質問・言葉の定義」(第一種荷主は「自らの事業(貨物の運送の事業を除く。)」に関して運送を委託する者。受託した運送を別の事業者へ再委託する物流子会社は荷主から除かれる) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/faq/ 2

  8. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「物流統括管理者(CLO)の選任」(選任義務は特定荷主・特定連鎖化事業者、法第47条・第66条) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo/ 2 3

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