運行管理者は何人必要?29台ルールと点呼・補助者の基本
増車で営業所のトラックが30両になったとき、運行管理者は何人必要なのでしょうか。「29台ルール」という呼び方だけを覚えていると、29台ごとに1人増やすのか、30台に達した時点で増やすのか迷いやすいところです。
結論は、運行管理者の最低選任人数は会社全体ではなく、事業用自動車の運行を管理する営業所ごとに計算する、です。被けん引自動車を除いた管理車両が29両までは1人、30〜59両は2人、60〜89両は3人が最低人数です。増車や営業所新設のときは、人数だけでなく、統括運行管理者、補助者、点呼の担当と記録、選任届まで一つの体制として点検する必要があります。123
この記事では、一般貨物自動車運送事業者等の営業所を念頭に、2026年8月2日時点の現行制度を整理します。個別の営業所への適用は、管轄の運輸支局等にも確認してください。
運行管理者の人数は営業所ごとに数える
貨物自動車運送事業法は、一般貨物自動車運送事業者に対し、事業用自動車の運行を管理する営業所ごとに、運行管理者資格者証を持つ人から運行管理者を選任するよう求めています。選任・解任をしたときは、国土交通大臣への届出も必要です。根拠条文は法第16条です。1
最低選任人数の算式は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条に定められています。営業所が管理する事業用自動車の数(被けん引自動車を除く)を30で割り、1未満の端数を切り捨てた数に1を加えます。2
| 営業所が管理する車両数 | 最低選任人数 |
|---|---|
| 1〜29両 | 1人 |
| 30〜59両 | 2人 |
| 60〜89両 | 3人 |
| 90〜119両 | 4人 |
このため、実務では「29両まで1人」と覚えると分かりやすい一方、29両増えるごとに1人を加えるルールではありません。境界は30両、60両、90両です。たとえば29両から1両増えて30両になれば2人必要ですが、59両から60両になれば3人必要です。解釈・運用通達にも同じ員数表が示されています。3
また、A営業所20両、B営業所15両なら、会社全体で35両だから2人を置けばよい、とはなりません。それぞれの営業所で1人以上を選任するのが出発点です。車両の所属や運行管理の実態が変わると必要人数も変わるため、増車だけでなく、減車、配置転換、営業所の新設・統廃合でも計算し直します。
なお、配置する事業用自動車が5両未満の営業所については、車種や地理的条件などを考慮し、安全確保に支障がないと地方運輸局長が認める場合の例外があります。5両未満なら自動的に選任不要になるわけではありません。 自社判断で外さず、個別の取扱いを確認する必要があります。2
複数選任なら統括運行管理者、変更時には届出が必要
最低人数を満たすだけでは、誰が何を判断するかが曖昧になることがあります。複数の運行管理者を選任する営業所では、その業務を統括する統括運行管理者を選任しなければなりません。運行管理規程でも、運行管理者や補助者の職務・権限、複数名を置く場合の業務分担や指揮命令系統を明確にしておくことが重要です。23
運行管理者を選任または解任した場合、法は「遅滞なく」届け出るよう定めています。解釈・運用通達では、遅くとも1週間以内に届け出るよう指導する、とされています。届出が必要なのは新設時だけではありません。退職、異動、増車に伴う追加選任などがあれば、社内の名簿だけを直して終わらせず、届出まで完了したかを確認します。13
運行管理者は、原則として他の営業所の運行管理者や補助者を兼務できません。一方、補助者には一定範囲で他営業所等との兼務が認められる場合があります。ただし、事業の種類や体制によって条件があり、運行管理規程への明記も必要です。「同じ会社だから兼務できる」と一律に判断せず、営業所ごとの選任状況と実際の勤務体制を照合してください。3
点呼で確認することと、1年間残す記録
点呼は、原則として業務前と業務後に、対面または対面と同等の効果を有すると国土交通大臣が定める方法で行います。両方をその方法で実施できない運行では、運行途中にも少なくとも1回の点呼が必要です。2
業務前の点呼では、主に次の事項を報告させ、確認し、運行の安全確保に必要な指示をします。
- 酒気帯びの有無
- 疾病、疲労、睡眠不足など、安全な運転ができないおそれの有無
- 日常点検の実施またはその確認
- 運行に必要な指示
業務後には、酒気帯びの有無に加え、車両、道路、運行の状況などの報告を受けます。交替する運転者がいる場合には、引継ぎに必要な事項も報告させます。確認項目を並べるだけでなく、異常があったときに乗務させない、交替させるなどの判断へつなげることが点呼の役割です。2
点呼の記録には、実施日時、方法、実施者と対象者、対象車両、報告・確認した内容、指示の内容などを運転者等ごとに残し、1年間保存します。点呼簿にチェックがあるだけでは、誰が誰に、いつ、どの車両について点呼し、何を確認・指示したのかを後からたどれない場合があります。記録様式を点検するときは、法定事項が一連の記録として結び付いているかを確認してください。2
遠隔点呼や自動点呼も制度化されていますが、電話やオンライン会議を使えば自由に対面点呼を置き換えられる、という制度ではありません。国土交通大臣告示で定める方法に従い、使用する機器、実施場所、運用体制などの要件を満たし、実施開始等の届出を行う必要があります。導入時には、利用する制度の種類と最新の要件を管轄官庁の案内で確認します。4
補助者は「運行管理者の代理」ではない
早朝・深夜を含む点呼を一人の運行管理者だけで回すのが難しい営業所では、補助者を置くことができます。補助者に選任できるのは、運行管理者資格者証を持つ人、または国土交通大臣が認定する基礎講習を修了した人です。23
補助者は、運行管理者の指導・監督のもとで、点呼など運行管理業務の一部を担当できます。ただし、解釈・運用通達上の位置づけは、運行管理者の履行補助者であり、運行管理者に代わって責任と判断を引き受ける代理者ではありません。また、補助者に点呼の一部を担当させる場合でも、その営業所で行う点呼総回数の少なくとも3分の1は、選任された運行管理者が実施する必要があります。3
補助者が点呼で、日常点検の未実施やその結果から安全運転できないおそれ、酒気帯び、疾病・疲労・睡眠不足、無資格運転、過積載、最高速度違反のおそれを確認した場合は、直ちに運行管理者へ報告し、その指示を受けます。したがって、補助者を選任しただけでは体制は完成しません。次の点まで具体化する必要があります。
- 補助者が担当する点呼の時間帯と範囲
- 異常時に連絡する運行管理者と連絡手段
- 運行管理者へ判断を引き継ぐ条件
- 連絡がつかない場合の対応
- 指示と対応結果を記録する方法
「補助者が点呼できる」を「補助者だけで判断できる」と読み替えないことが重要です。運行管理者が補助者の業務を把握し、必要な指示を出せる勤務・連絡体制になっているかまで確認します。
増車・営業所新設時の実務チェックリスト
営業所ごとに次の項目を1枚へまとめると、人数、役割、届出、記録を切り離さずに確認できます。
- 被けん引自動車を除く、営業所が管理する事業用自動車の現在数を確定した
- 30両、60両、90両など、次の増員境界を把握した
- 算式に基づく最低人数以上の運行管理者を選任している
- 複数選任の場合、統括運行管理者と業務分担を定めている
- 選任・解任の届出が完了し、社内の名簿と一致している
- 補助者の資格者証または基礎講習修了を確認している
- 点呼総回数の少なくとも3分の1を、選任された運行管理者が実施する当番になっている
- 補助者の担当範囲と異常時の報告・指示経路を運行管理規程に反映している
- 全時間帯の点呼担当を割り当て、欠勤時の体制も決めている
- 点呼の確認・報告・指示を運転者等ごとに記録し、1年間保存できる
- 遠隔点呼・自動点呼を使う場合、現行要件と届出状況を確認している
この棚卸しは、車両台帳、選任届、勤務表、点呼記録を別々に見るより、営業所・車両・担当者・運行を同じ単位で照合するのが効率的です。運送番頭でも、日々の配車と運行実績を業務記録として蓄積することで、誰がどの車両を担当したかを後から確認しやすくできます。ただし、点呼記録の作成や法令適合性の確認そのものは、運行管理規程と実際の体制に沿って事業者が行う必要があります。
まとめ
運行管理者の最低選任人数は営業所ごとに計算し、被けん引自動車を除く管理車両が29両までは1人、30〜59両は2人、60〜89両は3人です。「29台ルール」という通称ではなく、30両の境界に達するたびに1人増えると捉えると、増車計画へ落とし込みやすくなります。
ただし、必要人数をそろえるだけでは不十分です。複数選任時の統括、選任・解任の届出、補助者の権限と異常時の連絡経路、点呼の実施と1年間の記録保存までが一続きの運用です。まず営業所別に車両数と現在の担当体制を並べ、次の境界をまたぐ前に、人員配置と届出を見直してください。
脚注
-
e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」第16条 https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083 ↩ ↩2 ↩3
-
e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」第7条、第18条〜第20条 https://laws.e-gov.go.jp/law/402M50000800022 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
国土交通省・関東運輸局「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」(掲載版最終改正:令和6年10月1日) https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000334924.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
国土交通省・中国運輸局「対面による点呼と同等の効果を有する点呼方法(遠隔点呼・自動点呼)」 https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/00001_02424.html ↩
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